豆本の歴史を記した大著『Miniature Books: 4,000 Years of Tiny Treasures(豆本—小さな宝石の4000年)』によると、最古の豆本は古代メソポタミアの粘土板だとか。
粘土板を「本」としていいのかどうか、ちょっと抵抗がありますけれども……。
いずれにしても初期の豆本は、愛玩物というよりも、実用性から生まれたものであるに違いありません。
それは何かというと、聖書や祈祷書などの内容で、旅行などに持ち歩く便を考えて作られたものです。
この本にも図版が載っているのですが、日本の最古の豆本は、あの百万塔陀羅尼です。形状には何種類かありますが、天地幅(本の高さ)は平均5.5cmなので、まさに「豆本」と言えます。
*百万塔陀羅尼のレプリカ(田中栞所蔵)
川瀬一馬『日本書誌学用語事典』(雄松堂書店、昭和57年)には、日本最古の豆本として江戸時代の本が載っているのですが、確かに百万塔陀羅尼のほうが古いに決まっています。百万塔陀羅尼は冊子本(さっしぼん)ではありませんが、巻子本(かんすぼん。巻物のこと)だって立派な書物です。
百万塔陀羅尼は、持ち歩くために小さく作ったわけではありません。小さな塔の中に納めるために、この大きさになったのです。
それにしても、仏教ではありますがこちらも宗教書であるわけで、発端がこうした内容であるということは、決して偶然ではないでしょう。

